「百合子さん、お疲れ様」
定時を五分ほど過ぎたところで打刻をして会社を出れば、外で椿くんが待ってくれている。
「お待たせ。今日もお迎えありがとう」
「いえいえ。それじゃあ行こうか」
椿くんが差し出してくれた手に、そっと手を重ね、二人歩幅を合わせて帰路に就く。
――あの旅行以来、椿くんはこうして、毎日職場まで迎えに来てくれる。さすがに申し訳なさが過ぎるから、何度も大丈夫だと言っているんだけど、椿くんは一向に首を縦には振ってくれない。
「言ったでしょ? しばらくは何があるか分からないから、俺から片時も離れないでねって」
その言葉通り、出社時間を除けば、椿くんは食事中も出かける時も、寝る時だって、時間が許す限りはこうして側にいてくれる。
……お風呂の時は、さすがに遠慮してもらっているけど。
皇さん経由の仕事もしばらくは入らないみたいだから、とりあえず椿くんのOKが出るまでは、有難く迎えをお願いしているというわけだ。
申しわけない気持ちがあるのは嘘じゃないけど、こうして一緒にいられる時間が増えるのは、実際すごく嬉しい。
仕事でミスをして落ち込んでいたって、こうして椿くんの顔を見たらそんな憂鬱な気持ちも吹き飛んじゃうんだから、自分でも単純だなって思う。



