逃げられるものならお好きにどうぞ。



「ひ、ひぃっ! もう止め……!」



助けを請う男を、容赦なく殴り続ける。何度も、何度も。



――あの人が感じた痛みは、恐怖は、こんなものじゃない。もっと、もっと思い知らせてやらないと。二度と馬鹿な真似ができないように。いっそのこと、腕や足の一本や二本、折ってしまってもいいかもしれない。あの人に触れた汚らわしい手なんて、必要ないだろう。



「おい、そろそろ止めとけ。ほんとに死んじまうぞ」

「別にこんなやつが死んだところで、誰も困らないと思うけど?」



感情を削げ落とした顔で、すでに意識を失っている相手を足蹴にしている椿に、慎二は深いため息を吐き出す。



「オマエが人殺しになったら、嬢ちゃんが悲しむんじゃねーか」



踏み下ろそうとしていた足を、寸でのところでピタリと止めた。