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「ねぇ、どうしたの? 具合でも悪い?」
雨で濡れて冷え切った身体が重たい。
ぼーっとする意識の中、耳に届いた声が自分に向けられたものだと理解するまで、数秒の時間を要した。
「手、怪我してるね。あ、そうだ。ちょっと待ってて、確か絆創膏を持ってたはずだから」
「……いらない」
絆創膏を差し出そうとしているのだろう、こちらに向けられた白くて小さな手を払いのける。そうすれば、いつの間にか目の前に屈み込んでいた女の顔が、きょとんとしたものに変わった。
大きな焦げ茶色の瞳に、気だるげな顔をした俺が映っている。
「っていうか、アンタ誰。俺に構わないでくれる? ……迷惑だから」
ダークブラウンの長い髪を緩く巻いている女は、綺麗な顔立ちをしていた。無害そうな顔をしているが、どうせこの女も同じだろう。
俺みたいなのに声を掛けてくるのは、俺の容姿を気に入った頭の軽い女や、“他者に優しくできる自分”という悦に入りたいだけの奴や、承認欲求を満たしたい奴。
大体が耳障りの良い言葉を並べ立てて近づいてくる。
そしてそこには必ず、偽善や打算や見返りといったものが付属している。
それを、俺はよく知っている。



