「黒瀬くんは、私だって、あの時には気づいてたの?」
「うん、もちろん。まさか一年もしない内に再会できるとは思ってなかったけど」
ゆったりとした優しい笑みを浮かべていた黒瀬くんだったけど、何かを迷うような素振りを見せた後、彷徨わせていた視線を遠慮がちに向けてくる。
「あのさ、一つ聞いてもいい?」
「うん」
「昨日さ、皇さんと買い出しに行った時……何話してたの?」
「え?」
買い出しとは、罰ゲームで出かけた時のことを言っているんだろう。
でも、どうして黒瀬くんがそんなことを気にするんだろう。しかも、そんな不安そうな顔をして。
私が答えるよりも早く、黒瀬くんは言葉を付け足すように話し出す。
「皇さんに、プレゼントか何か、貰ってなかった?」
「うん、美代さんのお手伝いをしたバレンタインのお返しにって……もしかして黒瀬くん、あの時追いかけてきてくれてたの?」
「うん」
「それなら、声をかけてくれたら良かったのに」
黒瀬くんは力ない笑みを浮かべて、目を伏せる。
「……ウザがられたら、嫌だったからね」
――黒瀬くんって、いつもは強引でこっちのことなんてお構いなしってくらいグイグイくるのに、ごく稀にだけど、遠慮するような姿勢を見せることがある。
だけど、ここまでしおらしい黒瀬くんの姿を見るのは、初めてな気がする。



