「そういえば、昨日のことなんだけどね……私、思い出したの」
「昨日のことって、もしかして、絆創膏を貼ってくれた時に言いかけてたこと?」
「うん。黒瀬くん、前に言ってたよね? バーで会うよりも前に、私たちは出会ったことがあるって」
あの夜は、確か――そう。
ぽつぽつと雨が降っていて、傘を忘れてしまった私は、職場にあったビニールの置き傘をさして帰路についていた。
だけど気づけば雨は止んでいて、見上げれば、通り過ぎていった雲の後ろで、小さな星々が美しく瞬いていた。
「あの夜ね、不思議な男の子に出会ったの。雨が降っていたのに、傘もささないでずぶ濡れになって、鉄橋の隅に座りこんでた」
フードを深くかぶって、項垂れるように屈み込んで、全てを遮断するように俯いていた男の子。
普段なら多分、足を止めることなく通り過ぎていたと思う。だけどあの時の私は、その男の子のことが、どうしても気になってしまって。
「ねぇ、どうしたの? 具合でも悪い?」
――気づけば、声をかけていたんだよね。



