***
「此処が渡月橋か」
橋の欄干に手を掛けた黒瀬くんが、陽光を反射してきらきらと光っている川を見つめて、眩しそうに目を眇めている。
見上げれば雲一つない青空が広がっている、五月晴れの今日。
私と黒瀬くんは、嵐山を訪れていた。
傷が浅かったとはいえ、昨日、黒瀬くんは刺されたのだ。絶対安静だろうし、観光は難しいと思っていたのだけど、今朝方お医者さんにも診てもらえば、常人に比べたら傷の直りがかなり早いと驚いていた。
黒瀬くん本人も、もう痛みはないと言うので、お医者さんから外出をしてもいいとの許可が下りたのだ。
といっても無理は禁物なので、本来予定していた観光ルートは中止にして、今日は渡月橋の辺りでのんびり過ごすことにした。



