「それじゃあ俺が持ってるのは、クマ子って名前にしようかな」
黒瀬くんのスマホにぶら下がってゆらゆらしているクマ子が、私の手中にあるクマ男に、コツンとぶつかった。
顔を上げれば、黒瀬くんと至近距離で目が合う。――同時に、笑みがこぼれた。
「おーい。君たち、おれらがいること忘れてない?」
「二人だけの空気、作り出さないでくれる?」
「……あっ、すみません……!」
萌黄さんの茶化すような声と、美代さんからの呆れを含んだ声に、咄嗟に黒瀬くんから身を引いた。
そんなつもりはなかったけど、他者から距離感を指摘されるのって、気恥ずかしいものなんだな……。顔が熱くなってきた。
「お前さぁ……マジで今度、覚えておけよ」
「いや、何でおれだけ!?」
黒瀬くんの冷ややかなまなざしを受けた萌黄さんの、悲痛な突っ込みが響く。
こうして、今回の旅行は二泊三日の予定だったけれど、一日延ばして、もう一泊することになった。
とりあえず明日のことは黒瀬くんの回復を見て考えることにして、今日はこのまま就寝することになったのだ。



