逃げられるものならお好きにどうぞ。



「あっ、そうだ。百合子さん、はいこれ」

「あ、私のクマ男」



話に区切りがついたところで黒瀬くんが取り出したのは、クリスマスマーケットでお揃いで買った、クマのストラップだった。

どうやら、気づかないうちに落としていたらしい。多分、神社で拉致された時だろう。黒瀬くんが拾っていてくれてよかった。



「ぷっ、待って百合子さん。そいつにクマ男って名前を付けてるの?」

「え、そうだけど……何か変?」

「変じゃないけど……ふっ、ごめっ……何かツボにはいっちゃって……」



――クマ男って名前、そんなに面白かったかな?


何が黒瀬くんの笑いのツボを刺激したのかは分からないけど、肩を揺らしながら一頻り笑った黒瀬くんは、自分のスマホに付けているお揃いの茶色いクマを取り出した。