逃げられるものならお好きにどうぞ。



「とりあえず今回の旅費については、全額俺が負担する。それくらいはさせてもらわねーと、俺の気が済まねーんだ。だから俺のためと思って、受け取ってくれ」

「……分かりました。有難くお受けさせていただきますね」

「ああ、ありがとな」



頷けば、皇さんが安堵の笑みを浮かべる。

これで話が纏まったかと思いきや、またもや黒瀬くんが切り出した。



「あ、でも払ってくれるのは、俺の分だけでいいよ」

「何でだ?」

「いくら皇さん相手でも、百合子さんの分を、他の男に払わせたくないから」

「……ああ、そういうことか」



皇さんは納得した様子で頷いているけど、話を聞いていた美代さんと萌黄さんは、あからさまに顔を顰めている。



「えー、払ってくれるって言ってるんだから、そこは別に良くない?」

「アンタ、そこまでいくと重いわよ」

「は? 何が?」

「……まあアンタが重いことなんて、分かり切ってたことだけど」



しれっとした顔をしている黒瀬くんに、二人は揃って呆れた目を向けている。

そして何故だか、私の分の旅費を黒瀬くんが払ってくれるという方向で、話が纏まっているみたいだ。