逃げられるものならお好きにどうぞ。



「それじゃあ私は、慎二さんたちにも百合子ちゃんが目覚めたって伝えてくるわね。ついでに、何か食べるものも用意してくるから」

「ありがとうございます」

「椿も直に目を覚ますだろうし……百合子ちゃんはこのまま、傍にいてあげてちょうだい。あんなことがあった後だし、百合子ちゃんも無理はしないで、安静にしてるのよ」

「はい。……美代さん、本当にありがとうございます」

「ふふ、このお代は高くつくからね。……椿のこと、頼んだわよ」



美代さんは口角を上げてニンマリ微笑みながら、ひらりと手を振って部屋を出ていった。



「……もう、あんな椿を見るのは、御免だからね」



だけど部屋を出る直前、切なそうに目を細めて放った美代さんの一言が、私の耳に届くことはなかった。