逃げられるものならお好きにどうぞ。



「何、これ……」

「っ、ごめん、百合子さん……」



私の腕の中で辛そうに顔を歪めていた黒瀬くんが、力なく崩れ落ちる。


――今、黒瀬くんが、刺されたの? ……何で? どうして、どうして、どうして……。



「椿!」

「おい、大丈夫か!?」

「椿、しっかりしなさい! って、百合子ちゃん!? ちょっと、だいじょぅ――」



バタバタと響く、いくつもの足音。萌黄さんに皇さん、美代さんの声が、少しずつ遠くなっていく。


――そして私は、黒瀬くんの後を追うようにして、そのまま気を失ってしまった。