逃げられるものならお好きにどうぞ。



「おっと、大丈夫ですか? 具合が悪いなら、少し休んだ方がいい。肩をお貸ししますね」



男性が穏やかな声で言いながら、私の肩を抱く。

このまま意識を失ったらダメだって、分かっているけど――頭の中がふわふわしてきて、みるみる思考が奪われていく。



「……少しの間、おやすみなさい」



ねっとりした声が、じわりと鼓膜を揺らす。

それを最後に、意識がプツリと途切れた。