「黒瀬くんが、こんなにはしゃいでる姿を見るのって、初めてな気がする」
「……そう?」
「ふふ、そうだよ」
「……百合子さんとの旅行、俺、本当に楽しみにしてたんだよ」
繋いだ手をゆらゆらと揺らしながら、ツンと唇を尖らせている黒瀬くん。
これは……黒瀬くんが、あからさまに恥ずかしがっている。どうしよう、こんなこと言ったら拗ねちゃうかもしれないけど、すごく可愛い。
珍しい横顔を見上げながら、私は口元がにやけそうになるのを必死で堪える。
「同じだね」
「え?」
「私もね、今回の旅行、本当に楽しみにしてたの」
――でも、はしゃいでいるのは私だって同じだ。
非日常な環境で、隣には黒瀬くんがいて、昨日から心はそわそわと浮き立つばかりで。
だから黒瀬くんも同じくらいこの時間を愛おしんでくれていることが伝わってきて、胸がきゅうって、幸せな痛みを訴えてくる。
「だから今、こうして黒瀬くんと一緒に京都に来ることができて……すっごく嬉しい」
照れ臭さを感じつつ本音を伝えれば、黒瀬くんと繋がった手に、ぎゅっと力が込められるのが分かる。



