逃げられるものならお好きにどうぞ。



「あっ、もちろん、皆さんのお仕事の邪魔にならないように気をつけます」



言葉を付け足せば、皇さんは困り顔で笑う。



「いや……悪いな、嬢ちゃんが邪魔だなんて言いたかったわけじゃねーんだ。むしろ嬢ちゃんと出会ったことで、椿はいい意味で変わったと思う。アイツにとって嬢ちゃんは、酸素みたいなもんなんだろうな」

「酸素、ですか?」

「あぁ。前に椿本人が言ってたんだ。嬢ちゃんが側にいることで、自分は上手く息が出来るんだってな」



――黒瀬くん、私のことをそんな風に話してくれていたんだ。



「だがな……堅気の人間が、半端に首突っ込むもんじゃねぇ。それだけは、頭の片隅にでも置いといてくれ」



皇さんが、真面目な瞳で言う。



「アンタみたいな綺麗な人間が傷つくところは、見たくねぇからな」



そう言って微笑むその表情は……どうしてだろう。

ほんの少しだけ、悲しそうに見える。