逃げられるものならお好きにどうぞ。



「……美代さん、邪魔しないでよ」

「道端で乳繰り合ってんじゃないわよ。予約の時間過ぎちゃうじゃない! 慎二さんも待ってるんだから、さっさと歩いて。ほら、百合子ちゃんも行くわよ!」

「あ、はい!」



黒瀬くんは不満を漏らしてはいたけど、すっかり機嫌を直してくれたみたいだ。

隣を見上げれば、私と繋いだ手をゆらゆらと揺らしながら、その顔には喜色を浮かべている。



そして、無事にお店に到着した私たちは、鱧の煮こごりといった様々なおばん菜料理に、湯葉や天ぷら、メインの豆すし、デザートにくず餅まで付いた豪華なお膳をぺろりと平らげた。

今は店を出て、周辺をぶらぶらと歩いているところだ。


この後は別行動にするかという話にもなったけれど、時刻はすでに十五時を過ぎていて時間も余りないため、今日はこのまま皆で近場を観光してから宿に戻ろうということで、最終的には話がすんなりと纏まったのだ。

皇さんの一声と黒瀬くんの(滲み出る圧を感じる)説得もあって、美代さんと萌黄さんも了承してくれたので、明日は黒瀬くんと二人きりで観光できることになった。

黒瀬くんもそれならと、今日のところは皆で行動することに納得してくれたみたい。