「これでちょっとは、機嫌直してくれた?」
きょとんとした顔で自身の頬に手を当てている黒瀬くんを見ていたら――自分でキスしておいてなんだけど、急激に恥ずかしさが襲ってきた。
人の目がある外で自分からキスするだなんて……私、そんなキャラじゃなかったはずなのにな。
黒瀬くんの顔が真っ直ぐ見れなくて、視線を逸らす。
だけど黒瀬くんは、それを許してはくれない。私の両頬に手を添えて、顔を覗き込んでくる。
「……うん、直った。全回復した」
ふにゃりと相貌を崩して嬉しそうな笑みを零した黒瀬くんに、そのまま抱き寄せられる。
「わ、待って黒瀬くん。此処外だし、美代さん達だっているんだから……!」
「先に手を出してきたのは百合子さんの方だからね。最後まで責任はとってもらわないと」
「手、手を出したって……」
「百合子さんが人前でくっつくのは好きじゃないって知ってたから、朝から必死に耐えてたのに……こんな可愛いことされたら、もう我慢できない」
そう言って、今度は黒瀬くんの方から、優しい口づけを落とされる。
唇に触れた熱はすぐに離れていったけど、私を見下ろすその瞳には、隠しきれない甘やかな熱が滲んでいる。捕らえられた私は、視線を逸らすこともできない。
再び黒瀬くんの顔が近づいてきた――けれど、痺れを切らした美代さんが戻ってきたことで、黒瀬くんは強制的に引き剥がされていった。



