逃げられるものならお好きにどうぞ。



「黒瀬くん、あの……これってどういう状況なのかな?」

「……ごめんね」



黒瀬くんは苦虫を噛み潰したような顔をして車内を一瞥してから、キッと鋭いまなざしを美代さんに向ける。



「何よ、椿ってばそんなに怖い顔して」

「……誰のせいだと思ってんの?」

「さぁ、誰のせいでしょうね?」



美代さんは「うふっ」と可愛らしく笑っている。

そんな美代さんを見てそれは大きなため息を吐き出した黒瀬くんが、簡潔に状況を説明してくれた。


――どうやら、私と京都旅行に行くのだという話を聞いた美代さんが「ズルい!」と駄々をこねて、それを聞いた萌黄さんが、「なら俺たちも一緒に行けばいいじゃん」と今回の同行をこっそりと企てていたらしい。



「あ、それじゃあ、新幹線のチケットって……」



事前に買っておいたチケットは、私の分も黒瀬くんが持ってくれていた。だけど目の前に大きな車が停まっているということは、多分だけど、このまま車で向かうつもりなんだよね?



「実は……いつの間にか、美代さんに獲られちゃってたんだよね」



私の予想は当たっていたようだ。
京都まで、このまま車で行くことになるみたい。


黒瀬くんは不機嫌そうな顔で再び美代さんを睨みつけてから、車内の運転席の方にもそのまなざしを向けている。

……誰が乗っているんだろう? 萌黄さんかな?