逃げられるものならお好きにどうぞ。



「あの、黒瀬く…「楽しみだね」



にっこりと嬉しそうな笑みで同意を求められてしまい、何だか言及することもできないまま――まぁいいか、と、この場は流されることにした。


せっかくの京都旅行だし、思いきり楽しまないとね。

……後のことは、その時に考えることにしよう。うん。




後日、黒瀬くんと旅行の日程を決めて、会社に休みの申請もして、新幹線の切符を買ったり宿を予約したりして、準備を着実に進めていった。


買ってきた旅行雑誌を二人で眺めながら、気になる観光地に付箋を貼って、その中から、移動時間を考慮しつつ大体のスケジュールを決めたりもした。

二泊三日で行くことに決まった初めての黒瀬くんとの旅行に、ワクワクと胸を躍らせながら、久しぶりの京都の地に思いを馳せる。


――そう、二人きりで、楽しい思い出をたくさん作るはずだった。


だけど、出発直前にまさかの事態が発生したことによって、京都でとんでもない事件に巻き込まれることになるだなんて……計画を立てながら浮かれていたこの時の私も、黒瀬くんも――そんなこと知る由もなかったのだ。