逃げられるものならお好きにどうぞ。



「百合子さん、ホワイトデーはいらないって言ってたけど……やっぱり何かしら渡したかったからさ」



そう、黒瀬くんにはいつも貰ってばかりだから、ホワイトデーのお返しはいらないと事前に伝えておいたのだ。



「これなら一緒に食べられるし、いいよね?」



紙袋に入っていた白い箱の中を覗いてみれば、そこには私の好きなケーキやプリンなんかが、所狭しと並べられている。



「……ふふ、これは買ってきすぎじゃない?」

「そう? 百合子さんならぺろっと食べられるでしょ?」

「こんなに食べたら太っちゃう」

「大丈夫、百合子さんは太っても可愛いから」

「……すーぐそういうこと言うんだから」

「だって事実だし」



クスリと微笑んだ黒瀬くんは、「ほら、今日は俺が百合子さんを甘やかす日なんだからさ。百合子さんは座って待っててよ」と私をソファに座らせて、自分はキッチンに向かっていく。


どうやら黒瀬くんが朝食を作ってくれるらしい。……少しだけ心配だけど、今日は黒瀬くんの好意に甘えて、大人しく待っていようかな。