二月に入り、街中はブラウンやピンク色の可愛らしい装飾で彩られている。もう直ぐでバレンタインだからだろう。
店頭ではためくのぼりや広告には“大切なあの人へ”なんて文字と一緒に、チョコレートだけではなく、煌めくジュエリーの写真が掲載されているものも見られる。
立ち寄ったコンビニにも美味しそうなチョコレート菓子が並べられていて、その見た目の可愛さに、つい自分用にも買ってしまいたくなる。
「やぁ、いらっしゃい」
「マスター、こんばんは」
今日も仕事帰りに黒瀬くんが働いているバーに顔を出せば、目が合ったマスターが穏やかに声を掛けてくれる。
いつものカウンター席に座ろうとすれば、そこには先客がいた。――美代さんだ。
ついこの間、実は美代さんの性別が男性だったという衝撃事実を聞いたばかりだけれど、だからといって私たちの関係に何か変化があるわけもなく、こうして顔を合わせれば、とりとめのない雑談を繰り広げている。



