逃げられるものならお好きにどうぞ。



「前にも言った通り、嬢ちゃんの話は椿から聞いてたんだ。挨拶が遅れちまったが、俺は皇慎二。皇組の若頭をやってる。今日はこいつらの我儘に付き合わせちまってワリィな」



皇さんは申し訳なさそうな顔をして黒瀬くんと美代さんに視線を送る。



「いえ、今回の買い物は私が提案したことなので。今日はよろしくお願いします」

「あぁ」



皇さんと話していれば、いつの間にか先を進んでいた美代さんに呼ばれる。



「ちょっと百合子ちゃん、早く行きましょ!」

「あ、はい!」



駆け寄って隣を歩く美代さんを見れば……あれ? 何だか表情が強張っているような……。



「美代さん、もしかして……緊張してるんですか?」

「きっ、…緊張なんてしてるわけないでしょ!」



美代さんはくわっと威嚇するように私を見据えて、けれど直ぐ後ろに皇さんが歩み寄ってきていることに気づけば、すごすごとその勢いを弱めてしおらしい態度で歩き始める。


初めて見る美代さんの乙女な姿にほんわかしながら、四人で大型のショッピングモールに向かった。

軒を連ねるモール内を順に見て回りながら、気になった店があれば足を止めて試着したりする。



「ねぇ、これとかどう? 可愛いと思わない?」



美代さんが、オフホワイトのシフォンブラウスを自身の身体にあてがって問いかけている。――黒瀬くんに。

美代さんは何故か先ほどから、黒瀬くんの腕にべったりとくっついたままなのだ。