「ね~え、いいでしょ椿!」
“Bar curación”にて。
私の隣に座っているのは、つい二か月ほど前に知り合った美代さんだ。今日も変わらず美しく、得も言われぬ存在感を放っている。
そんな美代さんが一心に声を掛ける先には、カウンター内でグラスを拭いている黒瀬くんがいる。
「ちょっとくらいいいでしょ、付き合ってくれたって」
「無理かな」
「何よ、たかが買い物じゃない!」
話を聞いている限り、どうやら美代さんは、黒瀬くんと一緒にショッピングに行くことをご所望のようだ。
だけど黒瀬くんはさっきから「無理」「行かない」の一点張りで、首を縦に振る気配は微動も見られない。
「……何でよ」
美代さんが不機嫌であることを顕わにした表情で、あからさまにむくれている。
「俺には百合子さんがいるから」
黒瀬くんがサラリと答える。
「……今までは彼女がいたって、買い物には付き合ってくれてたじゃない」
「うん、今まではね。でもこれからは無理」
黒瀬くんに向けられていた美代さんの視線が、私に突き刺さってくる。
――ものすごく、見られている。というか、睨まれているのをひしひしと感じる。



