「え、大丈夫だよ。あっためるどころか、これじゃあ黒瀬くん、もっと寒くなっちゃうでしょ」
「俺は百合子さんと手を繋ぐからへーき。今日、マフラー忘れたんだよね? 百合子さんが風邪引いたら困るから」
「……風邪引いちゃうのは黒瀬くんの方でしょ」
「そしたら百合子さんにつきっきりで看病してもらうから大丈夫だよ。……って、前にも同じようなこと言った気がする」
黒瀬くんはにこりと楽しげに微笑んでいる。
これ以上何を言っても無駄だと察した私は、繋がった手にぎゅっと力を込めて僅かな反抗を示した。
だけど黒瀬くんは、そんな私の子どもじみた戯れにクスクスと笑うばかりだ。
そんなやりとりを続けながら歩いていれば、あっという間に目的地のアパートが見えてきた。



