「迎えにきてくれるのは嬉しいけど……せめて喫茶店とか、暖かいところで待っててくれていいのに」
「別にこれくらいへっちゃらだよ。それに、迎えに行ける時はきちんと連絡を入れてるんだから。それなら問題ないよね?」
黒瀬くんとお付き合いをするよりも前、あれは十一月のことだったか――前に一度だけ残業で遅くなってしまった時、それを知らない黒瀬くんに二時間も待ちぼうけをさせてしまったことがあった。
もちろん私も、黒瀬くんが迎えに来てくれていたなんて知らなかったから、会社を出て、ガードレールに腰掛けている黒瀬くんを見つけた時はすごく驚いた。
そんなことがあったから、迎えにきてくれる時にはせめて事前に連絡をしてほしいとお願いしている。
「それに……」
黒瀬くんに、さらりと左手を取られる。
「こうして百合子さんと手を繋ぐ口実ができるからね」
「そんなの……」
――口実なんてなくたって、いつだって繋いでくれていいのに。
「……手、冷たい」
「うん。だから百合子さんがあっためて」
黒瀬くんは自分の首に巻いていたマフラーをとって、私の首に巻き付けてくる。



