逃げられるものならお好きにどうぞ。



「っ、黒瀬くん、いきなり何す…「あんな可愛いことするなんてさ。百合子さんってほんとにズルいよね」

「……え? か、可愛いことって……何の話?」

「チョコレート」



――あぁ、これは……私の予想が外れたらしい。普通に気づかれていたみたいだ。


気づくはずないだろうなって思いながらも、心の片隅では、実は少しだけ期待していた。

気づいてくれたらいいなって。私の思いが、ほんの少しでも、黒瀬くんに届いたらいいなって。



私が黒瀬くんに思いを伝える手段として考えた、狡い方法。

それは、黒瀬くんに渡したクリスマスプレゼント――のおまけとして入れていた、冬季限定のチョコレート菓子。その外箱の隅っこに、小さく「大好き」と書いておいたのだ。


……本当に、自分でも何て回りくどいことをしてるんだろうって思うし、いい年をした大人が「好き」の一言さえまともに言えないなんて、恥ずかしくないのかと言われたらそれまでなんだけど……。



「ふっ、百合子さんって、ほんとに不器用だよね」



黒瀬くんはそう言って、私の瞼に、おでこに、頬に、キスの雨を降らせてくる。

私は身を固くしてそのキスを受け入れながら、「……不器用じゃない」と小さな声で反論した。



「百合子さん、可愛い」



私の言葉にクスクス笑っている黒瀬くんに、そっと頭を撫でられる。

私の方がいくつも年上のはずなのに、何だか子ども扱いされているような気がして――ぷいっと顔をそむけてしまう。