逃げられるものならお好きにどうぞ。



***


「……黒瀬くん?」



時刻は夜の二十二時をとっくに回っている。

耳に届いたインターホンの音に、こんな遅い時間に誰だろうと来訪者を確認すれば、そこには仕事帰りであろう黒瀬くんの姿があった。



――こんな時間に黒瀬くんが訪ねてくるなんて珍しい。


何か用事でもあるのかと扉を開ければ、特にいつもと変わらぬ様子の黒瀬くんが笑顔で立っていた。



「遅くにごめんね」

「ううん、それは大丈夫だけど……こんな時間にどうしたの?」

「んー……会いたくなったから。きちゃった」

「会いたくなったからって……さっきも会ったのに?」



問いかけながら、黒瀬くんを部屋に招き入れる。

十二月末の身の縮こむような寒さに、黒瀬くんの身体もすっかり冷え切っている。


ヒーターの前で待っているように伝えて、温かい飲み物を準備するためにキッチンに向かった。