逃げられるものならお好きにどうぞ。



「あなたは……」

「やっほー、お姉さん。あの時はごめんね? でもおれのおかげで、二人の距離もグッと縮まった感じでしょ?」

「……」



結局、どうしてこの人に声を掛けられたのかも、ホテルに連れていかれてドレスで着飾られたのかも、パーティーに参加することになったことだって……この人の魂胆は全く分からなかった。

現時点では、私にとって、素性も分からない怪しい人でしかない。


言葉は返さずに席を立とうかと考えていれば、そこに黒瀬くんが姿を現した。



「百合子さん、いらっしゃい」



黒瀬くんが店の奥からやってくる。

私を見て、そして長髪の男性を見て――笑顔のはずなのに、あからさまな不穏なオーラを漂わせながら、私と男性の間に割り入ってくる。