逃げられるものならお好きにどうぞ。



「すごい……綺麗だね」

「うん。……多分さ、百合子さんは覚えてないと思うんだけど……俺、バーで会うよりも前に、百合子さんと会ったことがあるんだよね」

「……え? 本当に?」



黒瀬くんみたいに綺麗な顔をした男の子、一度会ったら忘れることなんてなさそうだけど……。



「まぁ俺、その時はフードを目深に被ってて顔もよく見えなかっただろうし、話したのもほんの少しだったから、百合子さんが気づけないのも無理はないんだけどね」

「それって、いつのこと? 聞けば思い出せるかも」

「んー……それは、まだ内緒。もし百合子さんが思い出せたら、俺に教えてよ」



どうやら、黒瀬くんから教えてくれる気はないらしい。



「百合子さんと初めて会ったのも、星が綺麗な日だったよ」



黒瀬くんはツリーに飾られた星を見て、目を細めている。

私も正面にあるツリーに目を向ければ、ちかちかとまばゆい光が視界いっぱいに広がった。幻想的な光景に目を奪われる。