逃げられるものならお好きにどうぞ。



「百合子さんは、すごいと思う。だって変わりたくて、こうして行動してるんだからさ。それだけでも十分すごいことでしょ」

「でも……」

「俺なんてさ、ただ流れに身を任せて生きてきただけだよ。結局は、逃げてただけだったのかもね」



そう言ってどこか寂しそうに笑った黒瀬くんは、「それに」と言葉を続ける。



「ただ、あの小林とかいう男の見る目がないだけだろ。百合子さんは、凄く魅力的な人だよ」



恥ずかしげもなくサラッと褒められた。黒瀬くんの私を見るまなざしは、どろりとした蜜を孕んでいるような甘さで満ちている。

僅かに目線を下げれば、顔を覗き込まれて「ふっ、真っ赤」と笑われる。



「それに……さっきの奴にも、ほんの少しは感謝しないとかな」

「感謝って……どうして?」

「だって、百合子さんのはじめて全部、俺が貰えるってことだから」

「……ねぇ、それってどういう「百合子さん。こっち、きて」



立ち上がった黒瀬くんに手を取られて連れていかれた場所は、公園を抜けて少し歩いた先、溢れんばかりの星々が散りばめられた、大きなクリスマスツリーが飾られている場所だった。

周囲はこの時期限定なのだろう白や青のイルミネーションで彩られていて、辺りにはカップルの姿も多く見られる。