逃げられるものならお好きにどうぞ。



「というかさぁ……いい加減子どもじゃないんだから、そういうの、止めといた方が良いと思うけど? 男のツンデレとか気色悪いだけだから」



さらりと毒を吐き続ける黒瀬くんに、小林は顔を赤くして狼狽えている。



「はっ、はぁ? お、俺は別に、百合子のことなんて…「百合子さん、行こ」



黒瀬くんは繋がったままの私の手をそっと引いて、歩き出す。



「ちょ、ちょっと待てよ! まだ話は終わってな…「っていうかさ、……あんたに百合子さんの、何がわかんの?」



ひどく冷たい声。

振り返った黒瀬くんは、鋭く射抜くような視線で小林を一瞥する。



「ってか、まだいたんだ。邪魔だから、さっさと消えてくれる?」

「っ、……」



淡々とした口調で話す黒瀬くん。

蛇に睨まれた蛙のようにその場から動けず固まっていた小林だったけど、黒瀬くんが視線を外すと、ハッと我に返った様子で駆けていき、人混みに紛れてしまった。