――別に私は、あんたと話したいなんて思ったこと、一度もなかった。
やめてって言っても勝手に人の物を使ったり、「地味だ」「とろい」なんて嫌味をぶつけられたりしていた記憶しかない。
それを……話しかけてやってた? 何様のつもりなんだ。
勝手な物言いをされて、胸がむかむかしてきた。せっかくの今までの楽しかった気持ちが、少しずつ萎んでいく感覚。
――だけど、こんな奴の言葉、全部聞き流せば済む話だ。まともに取り合う方が、面倒なだけ。中高の時だって、そうしてきたんだから。
ムキになって反応すれば、余計に面白がらせて揶揄ってくるだけだって……分かってるから。
私は黒瀬くんの手を無言で引いて、もう行こうと目で訴える。だけど黒瀬くんは動こうとせずに、小林のことをじっと見つめている。
「だからまぁ、お兄さんも、こんな地味女止めといた方がいいっすよ」
「……へぇ、そうなんだ」
黙って小林の話を聞いていた黒瀬くんは、どこか単調じみた声で返した。
そして――。
「あんた、目が腐ってるんじゃないの? 良い眼科、紹介してあげようか?」
――とてもいい笑顔で、堂々と悪態を吐き出した。
それを真正面から受け取った小林は、口を半開きにして固まっている。



