逃げられるものならお好きにどうぞ。



「今日は、どこに行くの?」

「公園の方に行ってみない? 今ちょうど、クリスマスマーケットをやってるんだって」

「へぇ。私、クリスマスマーケットって行ったことないかも」

「うん、だから此処に決めたんだ。前に行ってみたいって言ってたから」

「……そっか。ありがとう」

「いーえ。実は俺も行ったことないんだよね。マスターに聞いたら、美味いものもたくさんあるって言ってたし、イルミネーションも綺麗なんだってさ。百合子さん、そういうの好きでしょ?」

「……うん、好き」



私の言ったことを覚えていてくれたことも、私のことを考えて行き先を決めてくれたことも、全部嬉しい。

だけどそれを全部素直に言葉にすることができなくて、小さな声で「好き」と返した。


でも、黒瀬くんにはそれだけでも伝わったみたいで「ならよかった」と嬉しそうにはにかんでいる。



――やっぱり黒瀬くんのことが好きだなぁって。


胸がぎゅって、苦しくなった。