逃げられるものならお好きにどうぞ。



「今の、黒瀬くんのお友達?」

「あー、まぁ、友達っていうか……前にバーに客として来たことがあって、そこで何となく話すようになったって感じかな」

「ふふっ、そっか」

「……何か、嬉しそう?」

「ん? いや、黒瀬くんが友達と話してる姿を見るのって初めてだったから、何だか新鮮だなって」

「ふーん」



よく分からないって顔をしていた黒瀬くんは、からくり時計を見上げて時刻を確認すると、自然な動作で私の左手を攫っていく。



「それじゃあ、行こっか」



繋がった手は、指を絡められて、恋人繋ぎになった。触れた掌からじんわり熱が伝わってくる。

こんな風に男の子と手を繋ぐのは初めてのことだから、少しだけ照れを感じてしまう。


だけどそれを隠すように平然を装って、黒瀬くんに話しかける。