「────もう、戻れねぇから」
部屋を照らしていた明かりが消え、一瞬にして世界が深い闇に包まれる。
わずかな月光が窓から差し込み、二人の間に漂う沈黙を照らしていた。
すぐ近くにいる彼の気配と、わずかな動きに合わせて生まれる衣擦れの音が、静かな空間に波紋のように広がっていく。
「……ぁ…っん…」
「翡翠、好きだ────」
そう言って、再び重ねられた唇は、さっきよりも低く、深く、私のすべてを奪い去るように熱い。
「っ、は、ぁ………」
呼吸の仕方も忘れて、私はただ、理性を無くした葵の熱に溺れていく。
────やがて、銀色の糸を残し、名残惜しそうにゆっくりと離された唇。


