20年越しの初恋カメラの向こうの君と

楽屋へと向かった愛斗は、まずメイクを施し、それから白いワイシャツに着替えると、撮影スタジオへと足を運んだ。
スタジオに到着した時点では撮影開始までまだ時間があり、愛斗は共演の敦子とともに、控室で出番を待っていた
ぽつりと敦子が口を開く。
「愛斗くん、ベッドシーン、緊張するね」
愛斗は素直に頷いた。
「はい」
「私もすごく緊張してるの。今までこういうシーン、やったことないから」
敦子が少しはにかむように言うのを聞いて、愛斗は柔らかく応じる。
「そうなんですね」
「うん……でも、お互い緊張するけど、最後までちゃんとやりきろうね」
「はい、頑張ります」
短い言葉を交わし合い、気持ちを整えた二人のもとに、撮影準備が整ったという声がかかった。
指示に従い、撮影が行われるセットへと移動し、まずはリハーサルを重ね、動きや台詞の確認を済ませる。
そして、いよいよ本番の時間が来た。
「——では、本番行くよ!」
監督の声が響き、周囲を囲むカメラが二人を捉える。
お互いの目をまっすぐに見つめ合い、ゆっくりと顔を近づけ、唇を重ねた。
口づけを交わしたまま、敦子が瞳を潤ませて囁く。
「真也くん……愛してる。旦那なんて、いらない……」
愛斗もまた、役になりきったまま、優しく、そしてはっきりと告げる。
「俺も……愛してます」
見つめ合う視線を外さず、愛斗はゆっくりと上着を脱ぎ、素肌を敦子へと晒す。敦子はその体に視線を移し、二人はそのまま流れるように、ベッドシーンを演じきった。
一連の演技が終わり、カットがかかる。
監督が笑顔で声をかけてくれた。
「キスシーン、すごく良かったよ」
「ありがとうございます」
二人は同時に頭を下げ、感謝の言葉を口にする。
撮影を終えた二人はスタジオを出て、愛斗は次のシーンに備えるため、再び楽屋へと戻った。楽屋ではすぐに衣装を着替え、続けてメイクの直しとヘアセットを済ませ、次のロケ地へと向かうため、用意されたロケバスに乗り込んだ。
バスの中で、愛斗と敦子は隣同士の席に腰を下ろし、他愛のない話を始める。話が弾む中、ふとしたはずみで手と手が触れ合い、愛斗は思わず頬を緩め、照れたように笑った。
そんな愛斗の手を、敦子がそっと握りしめてくる。
驚いて愛斗が小声で言う。
「あ……誰かに見られますよ」
敦子は悪戯っぽく笑って、平然と答えた。
「別にいいじゃない。見られたって、何も問題ないでしょ?」
「……わかりました」
愛斗は内心で嬉しさが込み上げ、にやける表情を抑えられないまま、その手をそっと握り返した。敦子とこうして手をつないでいられることが、ただただ嬉しかった。
話に夢中になっているうちに、バスは次の撮影スタジオへと到着した。二人は車を降り、撮影の準備が整うのを待つ。その間、スタッフからSNSへ投稿するための写真撮影を求められ、快く応じて記念の一枚を撮ってもらった。
しばらく待つと準備が完了し、二人は再びセットに入り、次のシーンの撮影へと臨んだ。
そのシーンが無事に終わり、今日の予定された撮影はすべて完了となった。
監督やスタッフに一人ひとりお礼を伝え、再びロケバスに乗り込み、元のスタジオへと戻る。
到着後は楽屋に戻り、メイクを丁寧に落とし、それからスタッフから用意された弁当を受け取った。
一日の疲れがどっと押し寄せる中、愛斗は今日一日の出来事を思い返しながら、席についた。