20年越しの初恋カメラの向こうの君と

関ヶ原が警官に連れられて店を出ていき、ようやく騒ぎが収まったとき、吉田栄作が深く息をつき、辛島美登里と顔を見合わせて口を開いた。
「まったく… あの男、前の音楽祭のステージにまで乱入してたよね。あのときも突然飛び出してきて会場を騒がせ、警備員が慌てて取り押さえていたのを、俺ははっきりと覚えているよ」
美登里も頷き、重たい口調で続ける。
「ええ、私も見ていました。大勢の観客やテレビカメラが回っている最中に現れるなんて、常軌を逸していると思っていましたが、まさかそれが始まりだったなんて…」
その言葉を聞いた瞬間、敦子の肩が小さく震え出した。過去の恐怖がよみがえり、我慢していた涙が一気にあふれて頬を伝う。
「あのときは混乱していて誰だかよくわからなかったけど… まさか同じ人がずっとつきまとっていたなんて。いつもどこかに見られているような気がして、安心できなかったの…」
末山愛斗はすぐに敦子を強く抱き寄せ、背中をゆっくりとさすりながら、耳元で優しく何度も囁いた。

「大丈夫、敦子。もう何も怖がらなくていい。ステージのときも今日も、これからも俺が絶対に側にいて守る。二度とあんな男に近づかせないから」

敦子は愛斗の胸元に顔を埋め、彼の温もりに身を委ねながら、少しずつ泣き声を収めていった。

しばらくしてスタッフがろうそくの灯ったケーキを運んできて、結婚を祝福してくれた。二人がお礼を言って笑顔を取り戻すと、愛斗は改めて敦子の目をまっすぐ見つめ、力強く語りかけた。
「敦子、俺はこれからもずっと君のことを大事にして、徹底的に愛を注いで、二人で生きていきたい」
敦子は胸がいっぱいになり、愛斗の首にぎゅっと抱きついた。
「うん… 私も同じ気持ちです」
それを見た栄作がくすりと笑って、二人に向けて言った。
「おいおい、その台詞…『徹底的に愛を注いで』って、俺が昔主演したドラマで、ヒロインに向かって言ったあの有名なセリフじゃないかい?」
敦子は頬を染めて照れ笑いを浮かべ、小さな声で答える。
「実はね… 私たち、これからデュエットを歌うときには、毎回この言葉をお互いに言い合っているんです。これが二人の合言葉みたいになっていて…」
栄作と美登里は思わず顔を見合わせ、驚きと喜びの表情になる。
「毎日歌う前に? そんな風に受け継いでもらえるなんて、作った俺としても本当に嬉しいよ」
「素敵な習慣ですね。だからこそお二人の歌には、心からの温かさがこもっているのでしょう」
愛斗も照れながら頷く。
「栄作さんの言葉に、自分の気持ちが全部詰まっているように感じたんです。これからもずっと、この言葉と共に二人で歩んでいきます」
そんな二人の姿を見て、先ほどまでの嫌な緊張感はすっかり消え去り、祝宴は再び温かく幸せな雰囲気に包まれていった。
祝宴の一場面
騒ぎが落ち着いた頃、店員が静かに襖を開け、ろうそくの灯ったホールケーキを運んできた。
「ささやかですが、お二人の結婚と新しい命を、心から祝福しています」
甘い香りが部屋に広がると、敦子と愛斗は思わず目を丸くし、次いで満面の笑みになった。
「まあ、こんなに素敵なケーキを… ありがとうございます!」
敦子は手を胸に当てて喜び、愛斗も深く頭を下げる。
「こんな心遣い、本当に嬉しいです。ありがとうございます」
二人は顔を見合わせ、これからの幸せな日々を思い浮かべるように、柔らかく笑い合った。