ステージの準備が進む中、愛斗は控室でステージ衣装に着替え、美容師に髪を整えてもらった。襟元のラインがきりりと引き締まり、照明を受けることを想定したセットが完成すると、彼は隣の部屋へと向かった。
ドアを開けると、敦子が鏡の前で静かにメイクを施しているところだった。
「あれ、いつの間にメイクしてたの?」
愛斗が声をかけると、敦子は手を止めて振り返り、柔らかく笑った。
「愛斗くんが着替えている間に済ませたの」
「そうなんだ」
「うん」
短い言葉が交わされただけで、二人の間には温かな空気が流れる。愛斗はそっと敦子の肩を抱き、そのまま唇を重ねた。柔らかく、静かな口づけが、これから始まる時間への心構えのように続いた。
キスを終えると、愛斗は「行こうか」と声をかけ、二人は並んでサイン会兼配信ステージの会場へと向かった。
会場に着くと、スタッフが機材や椅子の配置を最終確認している最中だった。二人は邪魔にならない場所に立ち、準備が整うのを待った。やがてスタッフが「準備完了です」と合図を送ると、敦子はカメラの少し脇に移動し、愛斗の後ろから見守る位置にスタンバイした。
オープニングのBGMが流れ、照明が愛斗の立つ場所に集まる。彼は一歩前に出て、にっこりと笑みを浮かべた。
「皆さん、初めまして。末山愛斗です。最初に、僕自身が作詞し、敦子のために書き下ろした曲——『君は僕の大切な人』をお届けします」
その言葉に続いてイントロが流れ、愛斗の澄んだ演歌の声が会場いっぱいに響き渡った。一曲歌い終えると、彼は息を整えて再び話し始めた。
「次は、僕のデビュー曲『離さないこの手で』です。この曲に込めた思いも、今となってはまた違った意味を持つようになりました」
力強くも温かいメロディが続き、ステージには静かな感動が満ちていった。
二曲が終わると、愛斗は正面を向き、丁寧に挨拶をした。
「改めて、初めまして。演歌歌手であり、俳優としても活動している末山愛斗です。本日はこのインターネットサイン会に、多くの方が参加してくださり、心から感謝しています。実は先日、大きな音楽祭のステージ上で、私は敦子にプロポーズをしました。おかげさまで、このたび結婚する運びとなりました。今日は、そんな妻が応援に駆けつけてくれています」
愛斗が手を差し伸べると、カメラの脇にいた敦子がゆっくりと前に出て、隣に立った。
「初めまして、仙道敦子です。今日は特別に参加させていただきました。慌てて準備したので、薄化粧でごめんなさい」
少し照れたように頭を下げる敦子に、愛斗はすぐに優しく言葉を添えた。
「そんなことない、とても綺麗だよ、敦子」
「ありがとう」
二人が見つめ合う様子に、画面の向こうからも温かな反応が届く。愛斗は再び前を向き、宣言した。
「それでは今日は特別に、僕たち二人のデュエット曲『今を抱きしめて』を歌わせていただきます」
柔らかな伴奏が始まり、愛斗の声に敦子の声が重なり合う。互いの息遣いまで伝わるような、心からの歌が、画面の前にいる人たちに届けられた。
歌が終わると、いよいよサイン会の準備に移る。画面の下には次々とコメントが流れていく。
——「結婚おめでとうございます!」
——「音楽祭でのプロポーズ、しっかり見ました!」
——「本当にお似合いのカップルですね」
——「『今を抱きしめて』を生で聞けて、すごく嬉しいです」
——「美男美女で絵になります」
——「敦子さん、薄化粧でも十分綺麗ですよ」
——「愛斗さんが羨ましい!」
二人はそれらのコメントを一つずつ読み上げ、笑顔でお礼を述べた。
それからサイン会が正式にスタートし、名前を呼ばれるたびに愛斗は丁寧にサインを書き、敦子も隣で手を添えたり、言葉を交わしたりして応えていった。時間はあっという間に過ぎ、約二時間半が経つと、予定通りに終了の合図が出た。
二人はスタッフの手伝いをしながら片付けを進め、最後に「お疲れ様でした」と声をそろえて挨拶を交わすと、音楽堂の外へと足を踏み出した。夜風が二人の頬をなで、これから始まる新しい日常への道が、静かに続いていた。
ドアを開けると、敦子が鏡の前で静かにメイクを施しているところだった。
「あれ、いつの間にメイクしてたの?」
愛斗が声をかけると、敦子は手を止めて振り返り、柔らかく笑った。
「愛斗くんが着替えている間に済ませたの」
「そうなんだ」
「うん」
短い言葉が交わされただけで、二人の間には温かな空気が流れる。愛斗はそっと敦子の肩を抱き、そのまま唇を重ねた。柔らかく、静かな口づけが、これから始まる時間への心構えのように続いた。
キスを終えると、愛斗は「行こうか」と声をかけ、二人は並んでサイン会兼配信ステージの会場へと向かった。
会場に着くと、スタッフが機材や椅子の配置を最終確認している最中だった。二人は邪魔にならない場所に立ち、準備が整うのを待った。やがてスタッフが「準備完了です」と合図を送ると、敦子はカメラの少し脇に移動し、愛斗の後ろから見守る位置にスタンバイした。
オープニングのBGMが流れ、照明が愛斗の立つ場所に集まる。彼は一歩前に出て、にっこりと笑みを浮かべた。
「皆さん、初めまして。末山愛斗です。最初に、僕自身が作詞し、敦子のために書き下ろした曲——『君は僕の大切な人』をお届けします」
その言葉に続いてイントロが流れ、愛斗の澄んだ演歌の声が会場いっぱいに響き渡った。一曲歌い終えると、彼は息を整えて再び話し始めた。
「次は、僕のデビュー曲『離さないこの手で』です。この曲に込めた思いも、今となってはまた違った意味を持つようになりました」
力強くも温かいメロディが続き、ステージには静かな感動が満ちていった。
二曲が終わると、愛斗は正面を向き、丁寧に挨拶をした。
「改めて、初めまして。演歌歌手であり、俳優としても活動している末山愛斗です。本日はこのインターネットサイン会に、多くの方が参加してくださり、心から感謝しています。実は先日、大きな音楽祭のステージ上で、私は敦子にプロポーズをしました。おかげさまで、このたび結婚する運びとなりました。今日は、そんな妻が応援に駆けつけてくれています」
愛斗が手を差し伸べると、カメラの脇にいた敦子がゆっくりと前に出て、隣に立った。
「初めまして、仙道敦子です。今日は特別に参加させていただきました。慌てて準備したので、薄化粧でごめんなさい」
少し照れたように頭を下げる敦子に、愛斗はすぐに優しく言葉を添えた。
「そんなことない、とても綺麗だよ、敦子」
「ありがとう」
二人が見つめ合う様子に、画面の向こうからも温かな反応が届く。愛斗は再び前を向き、宣言した。
「それでは今日は特別に、僕たち二人のデュエット曲『今を抱きしめて』を歌わせていただきます」
柔らかな伴奏が始まり、愛斗の声に敦子の声が重なり合う。互いの息遣いまで伝わるような、心からの歌が、画面の前にいる人たちに届けられた。
歌が終わると、いよいよサイン会の準備に移る。画面の下には次々とコメントが流れていく。
——「結婚おめでとうございます!」
——「音楽祭でのプロポーズ、しっかり見ました!」
——「本当にお似合いのカップルですね」
——「『今を抱きしめて』を生で聞けて、すごく嬉しいです」
——「美男美女で絵になります」
——「敦子さん、薄化粧でも十分綺麗ですよ」
——「愛斗さんが羨ましい!」
二人はそれらのコメントを一つずつ読み上げ、笑顔でお礼を述べた。
それからサイン会が正式にスタートし、名前を呼ばれるたびに愛斗は丁寧にサインを書き、敦子も隣で手を添えたり、言葉を交わしたりして応えていった。時間はあっという間に過ぎ、約二時間半が経つと、予定通りに終了の合図が出た。
二人はスタッフの手伝いをしながら片付けを進め、最後に「お疲れ様でした」と声をそろえて挨拶を交わすと、音楽堂の外へと足を踏み出した。夜風が二人の頬をなで、これから始まる新しい日常への道が、静かに続いていた。

