20年越しの初恋カメラの向こうの君と

番組の収録が全て終わり、スタジオの明かりが少しずつ落ち着いていく中、末山愛斗と仙道敦子は並んでゆっくりと歩き出した。疲れは感じていても、心の中は温かな満たされた気持ちでいっぱいだった。
すると、背後から柔らかな声が二人を呼び止める。振り返ると辛島美登里が立っていて、にっこりと笑みを浮かべた。
「お二人、本当におめでとう。ステージでの瞬間、私も胸が熱くなりました。これから末永くお幸せに」
心からの祝福の言葉に、愛斗も敦子も深く頭を下げて応えた。
「ありがとうございます。これからも二人で力を合わせて歩んでいきます」
その後、二人は同じく帰り支度をしていた吉田栄作にも声をかけ、お祝いの言葉を受けた。栄作も「運命的な出会いだったんだな」と笑ってくれ、改めて感謝を伝えると、二人はスタジオを後にした。
外はすっかり夜の帳が下りていた。少し歩いた先にある馴染みの居酒屋へと足を向け、落ち着いた個室に案内される。メニューを開いて料理を注文し、飲み物を待つ間、今日一日の出来事を思い返していた。
運ばれてきたのは、愛斗の前にはコーラ、敦子の前にはノンアルコールのカシスオレンジ。二人はグラスを軽く合わせた。
「お疲れ様」
「お疲れ様」
柔らかな響きが交わると、敦子は少し眉を下げて話し出す。
「今日は乱入者のこと、愛斗くんが守ってくれて本当にありがとう。でも、周りの皆さんにも驚かせたり、迷惑をかけたりしてしまったわ…」
愛斗はゆっくりと首を振り、優しい目で敦子を見つめる。
「敦子が悪いわけじゃない。悪いのは他人の気持ちを考えずに騒ぎを起こす奴だ。君は何も気に病む必要はない」
その言葉に、敦子の肩の力が少し抜ける。そして次には、嬉しそうに瞳を潤ませながら続けた。
「…うん、そうだね。それから、ステージでプロポーズしてくれて、本当に嬉しかった。忘れられない一日になったわ。ありがとう」
愛斗はただ静かに頷き、その笑顔を見つめていた。
料理を囲みながら、番組のこと、昔の思い出、これからのことを語り合っているうちに、時間はあっという間に過ぎていった。約二時間が経った頃、二人は店を出て、途中のコンビニで少し買い物を済ませると、ゆっくりと自宅へと戻った。
家に着くと、今日収録した歌番組の録画を再生した。画面に映る自分たちの姿や、ステージで交わした言葉、祝福の声を改めて見ながら、二人はまた胸の奥が熱くなるのを感じた。一通り見終わると、順番にお風呂に入り、一日の疲れを洗い流してから、静かに眠りについた。
翌朝、日の光がカーテンの隙間から差し込んで目が覚めた。朝食代わりにコンビニで買っておいた菓子パンを分け合って食べ、身支度を整えると、二人は今日の予定に向かって動き出した。
最初に向かったのは愛斗の事務所だ。社長室に入ると、愛斗は真っ直ぐに向き直り、はっきりと報告する。
「社長、昨日のテレ東音楽祭で仙道敦子さんにプロポーズし、結婚することになりました。これからもよろしくお願いします」
社長は驚いた様子もなく、柔らかく笑って応えてくれた。
「そうか、おめでとう。お二人にはきっと素晴らしい未来が待っているだろう。これからも体に気をつけて、仕事にも家庭にも力を注いでください」
「ありがとうございます」
少し仕事の予定などについて話をした後、二人は事務所を後にした。
次に向かったのは市区町村役場だ。窓口で婚姻届の用紙を受け取り、備え付けの机で丁寧に必要事項を記入して提出する。職員が確認と手続きを行う間、二人は隣に並んで静かに待っていた。約二十分ほどで手続きが完了し、職員が笑顔で声をかけてくれた。
「これで正式に受理されました。ご結婚、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
手続きを終えて役場を出ると、二人は近くのコンビニへ立ち寄った。愛斗はカフェオレを、敦子はレモンティーを買って、外のベンチに腰を下ろす。冷たい飲み物を一口飲んでほっと一息ついたとき、愛斗は敦子の肩をそっと引き寄せ、柔らかく唇を重ねた。
晴れて夫婦となった二人の、穏やかで温かな新しい日々が、こうして静かに始まっていった。