隣の席の悪魔【旧版】

文化祭当日。

校内は、
いつもより騒がしかった。

飾り。

笑い声。

焼きそばの匂い。

廊下を歩くだけで、
色んな音が混ざってくる。

学校全体が、
いつもより少しだけ浮ついて見えた。

廊下には、
大きく飾られた、
写生大会の入賞作品。

夕方と夜の間みたいな空。

駐輪場。

フェンス。

伸びる影。

誰もいない景色なのに。

私には、
ちゃんと“いつもの時間”に見えた。

「これすごくない?」

「空綺麗!」

知らない先輩たちが話してる。

なんか。

恥ずかしい。

でも。

嬉しい。

胸の奥が、
少しだけあったかい。

その時。

「……いた」

低い声。

振り向く。

「空くん!」

思わず笑う。

空くんは展示の前まで来ると、
少しだけ絵を見上げた。

静か。

ただ。

ちゃんと見てる。

その横顔を見てるだけで、
なんか落ち着かなかった。

その時。

空くんが、
ぽつり。

「……いつもの色」

え。

私は思わず、
空くんの顔を覗く。

空くんは前を向いたまま、
小さく続ける。

「夕方の」

その言葉だけで。

空くんも、
同じ景色を見てたんだって、
分かった。