隣の席の悪魔【旧版】

空はまだ明るいのに、
風だけ少し涼しい。

グラウンドの向こう。

大きな入道雲。

もう夏みたいな空だった。

「で?」

隣から、
落ち着いた声。

「どこ走るの」

空くん。

自前のジャージ姿。

思ったより、
かっこいいのがムカつく。

足長。

いや。

小さいけど。

バランスいい。

……なんか悔しい。

「星野?」

「あ、はい!!」

やば。

見てた。

「ぼーっとしてんな」

「してないし!」

私は慌てて咳払いした。

「えっとね!
校舎の周り!」

「グラウンドじゃないんだ」

「景色変わるほうが好き」

「贅沢者」

「一周ね!」

「短くない?」

「え?」

「勝負だろ」

……確かに。

「じゃあ、
三周!!」

「増えすぎ」

決まってる空くんとは対照的に、
私が着てるのは学校の体操服。

……ジャージ、
買いに行こう。

肩まで伸びた髪を結ぶ私に、
空くんがぽつりと言う。

「負けたら、
ジュースだから」

……え。

覚えてた。

私は、
ニヤつく顔を隠す気もなく答えた。

「望むところ!!」