隣の席の悪魔【旧版】

駅前。

コンビニの灯り。

人の声。

信号待ち。

私は横目で、
空くんを見る。

見上げる高さが、
少し増えてる。

でも。

少し眠そうな顔とか。

目を細める癖とか。

……変わってない。

その時。

空くんが、
ぽつり。

「……星野」

「ん?」

「明日、
仕事何時まで」

え。

私は瞬きをする。

「……五時、
少し過ぎるくらい」

空くんは、
視線を前へ戻した。

そして。

「じゃあ、
そのくらい行く」

心臓が、
どくんと音を立てる。

「走るんだろ」

空くんは、
前を向いたままそう言った。

「うん」

小さい返事。

でも。

胸の奥は、
あの頃みたいにあったかかった。



その時。

風が吹く。

私は思わず、
マフラーを押さえた。

すると。

空くんが、
ふっと笑う。

「……昔より、
ちょっと静かになった」

「えー?」

私は思わず吹き出した。

「何それ」

「ずっと一人で喋ってた」

「失礼な!!」

私はむっと頬を膨らませる。

その時。

空くんが、
少しだけ目を細めた。

「……やっぱ、
変わってない」

空くんは、
小さく笑った。



改札前。

夜風。

人の流れ。

「明後日、
向こうに戻る」

え。

私は少し俯く。

「後期始まるし」

やっと会えたばかりなのに。

でも。

何年会ってなくても。

空くんは、
ちゃんと空くんだった。

その時。

空くんが、
一回だけ口を開きかける。

そして。

少し視線を逸らしたまま、
ぽつり。

「……また明日」

え。

私は顔を上げる。

胸の奥が、
ぎゅっとなる。

「うん」

小さく頷く。

今度は。

ちゃんと、
明日が来る。

そのことが。

なんか、
泣きそうなくらい嬉しかった。