隣の席の悪魔【旧版】

放課後。

図書室。

卒業式を一週間後に控えた、
この日。

私はパソコンの前で、
固まっていた。

受験番号。

入力欄。

震える指。

「……むり」

私は小さく呟く。

窓際の席にいた空くんが、
小さくため息をついた。

そのあと。

椅子を引く音。

気づけば。

空くんは、
私の隣へ来ていた。

「早くしろ」

「空くん冷たい!!」

「受けたの、
お前だろ」

私はむっとしながら、
もう一度画面を見る。

心臓。

うるさい。

画面には、

『合格者発表』

の文字。

怖い。

その時。

隣から、
小さな声。

「大丈夫」

え。

私は思わず空くんを見る。

空くんは、
前を向いたまま。

そして。

ぽつり。

「……俺もいるから」

その言葉だけで。

張りつめてたものが、
少しだけほどける。

私は小さく息を吸う。

そして。

クリック。

数秒。

読み込み。

長い。

「っ……」

その瞬間。

画面に表示される、
番号。

私は一気に息を止める。

「……あ」

涙が滲む。

その時。

空くんが、
少しだけ画面を覗き込んだ。

数秒。

そして。

小さく息を吐く。

「……ほら」

その声が、
少しだけ笑ってる。

私は涙を拭いながら、
思わず笑った。

「受かってる……」

すると。

空くんが、
少しだけ目を細める。

「知ってた」

心臓が、
ドクンと大きく跳ねる。

窓から吹き込む風は、
少しだけ春の匂いがした。

空くんと同じ春を、
ちゃんと迎えられる。

私はもう一度、
画面の番号を見た。

涙で滲んで、
少しぼやけていた。

でも。

春が来るってことは。

私はその先を考えようとして、
やめた。

胸の奥が、
少しだけ静かになったから。