「……遥希?」
芽依子の声に、遥希は我に返った。
「ん?」
「また変な顔してる」
「失礼やな」
そう言いながらも、口元は緩んでいる。
芽依子は首を傾げると、自分で焼いた卵焼きを箸で摘まんで見せる。
「ちゃんと美味しくなったでしょ?」
「せやな」
「……何その反応」
「いや……」
遥希は、箸を持っている芽依子の手を引き寄せ、自分の口に運ぶ。
昔みたいな殻の食感もない。
焦げた匂いもしない。
綺麗な黄金色に、甘さに隠れた出汁の味。
「めっちゃ成長したなぁ思って」
「でしょ!あの銅板製のも使いこなせるからねっ」
得意気に胸を張る芽依子。
昔と変わらないその姿に、遥希は自然と笑った。
「でも俺は、一作目も好きやったで」
「やめてっ!思い出させないで!」
「めっちゃ必死やったやん。ハラハラした三十分やったわ」
「遥希ぃぃぃ!」
顔を真っ赤にして抗議する芽依子を抱き寄せる。
いつもの甘い匂いに、ふわりと出汁の香りがした。
「……ありがとな」
「え?」
「今も、昔も」
きょとんとする芽依子の額にキスを落とす。
「今日の卵焼きも、めっちゃうまい」
「明日のお弁当にも、作ってあげるよ?」
「毎日でもええよ」
「そんなに好きだっけ?」
「ちゃうよ。俺のために、一生懸命なめいが、やで」
そう言うと、芽依子は照れくさそうに、変わらない愛しい顔で笑った。



