遥希と芽依子が結ばれたものの、互いの仕事が忙しく恋人の余韻に浸る暇など皆無だった。
(あたしの繁忙期が落ち着いたと思ったら、消防署のイベントに、救命士の病院研修……)
芽依子はリビングの壁に貼ってあるカレンダーとにらめっこしていた。
遥希の病院研修の丸印も明日までだ。
(はる兄の救命士姿……カッコいいもんね)
付き合ってすぐの頃。
忘れ物を届けに行ったときに、ちょうど救急車が搬送先から帰署してきた。
「めいっ、ありがとうな」
まだ防護服に身を包んだままの遥希が降りてきた。
他の隊員と同じ格好だが、遥希が着ると殊更色気とカッコ良さが増していて、芽依子は見惚れてしまった。
(執事服もだけど……やっぱり何着てもカッコいいのは反則だよね……)
芽依子は、仕事に勤しむ恋人の姿を思い浮かべながら、お風呂の準備に取り掛かる。
ふと鏡に映る自分を見て、首を傾げた。
ワンピースにまとめた髪、薄いピンクのリップ。
……最近、自分磨きと称して、身だしなみに気合いが入っていたのだが。
「……待って」
数秒後、芽依子は鏡の前で固まる。
「今気付いた……おしゃれな下着なんて持ってない……」
正直、江崎の時は、"お付き合い"が精一杯で、恋人らしいことはキス止まりだった。
遥希とは付き合うこと自体が夢のようで、芽依子はその先のことはあまり想像していなかった。
(そうだよね……ただ単にイチャイチャだけじゃない……よね……)
知識の乏しい芽依子は急いでスマホを手に取り、メッセージアプリの友達一覧をスクロールしていく。
(……ってだめだ……恥ずかしすぎて相談出来ない)
忙しい脳内を落ち着かせるため、芽依子は一旦、湯船に浸かった。
ほっこり温まったおかげで、改めて芽依子は考える。
はちみつ紅茶をゆっくり飲みながら、スマホで検索していると、ある小説の存在を思い出した。
芽依子は自室の本棚から目当ての本を取り、ベッドに寝転んだ。
江崎と付き合ってることが辛いときに、この小説を読んで現実逃避していたのだ。
改めて、一巻から読み進めていく。
「政宗は、腕をついて視線を絡める。『……もう逃がさへん』……『好きな子が無防備なん、反則やろ』……っつ!」
気づけばセリフを声に出していた芽依子は、耳まで真っ赤になっている。
「む、むりむりむりっ……!!」
そのまま、枕に突っ伏して転がる。
「久しぶりに読んだけど……やっぱり良いなぁ~」
読みはじめたら止まらなくなり、とっぷりと夜が更けていった。
(あたしの繁忙期が落ち着いたと思ったら、消防署のイベントに、救命士の病院研修……)
芽依子はリビングの壁に貼ってあるカレンダーとにらめっこしていた。
遥希の病院研修の丸印も明日までだ。
(はる兄の救命士姿……カッコいいもんね)
付き合ってすぐの頃。
忘れ物を届けに行ったときに、ちょうど救急車が搬送先から帰署してきた。
「めいっ、ありがとうな」
まだ防護服に身を包んだままの遥希が降りてきた。
他の隊員と同じ格好だが、遥希が着ると殊更色気とカッコ良さが増していて、芽依子は見惚れてしまった。
(執事服もだけど……やっぱり何着てもカッコいいのは反則だよね……)
芽依子は、仕事に勤しむ恋人の姿を思い浮かべながら、お風呂の準備に取り掛かる。
ふと鏡に映る自分を見て、首を傾げた。
ワンピースにまとめた髪、薄いピンクのリップ。
……最近、自分磨きと称して、身だしなみに気合いが入っていたのだが。
「……待って」
数秒後、芽依子は鏡の前で固まる。
「今気付いた……おしゃれな下着なんて持ってない……」
正直、江崎の時は、"お付き合い"が精一杯で、恋人らしいことはキス止まりだった。
遥希とは付き合うこと自体が夢のようで、芽依子はその先のことはあまり想像していなかった。
(そうだよね……ただ単にイチャイチャだけじゃない……よね……)
知識の乏しい芽依子は急いでスマホを手に取り、メッセージアプリの友達一覧をスクロールしていく。
(……ってだめだ……恥ずかしすぎて相談出来ない)
忙しい脳内を落ち着かせるため、芽依子は一旦、湯船に浸かった。
ほっこり温まったおかげで、改めて芽依子は考える。
はちみつ紅茶をゆっくり飲みながら、スマホで検索していると、ある小説の存在を思い出した。
芽依子は自室の本棚から目当ての本を取り、ベッドに寝転んだ。
江崎と付き合ってることが辛いときに、この小説を読んで現実逃避していたのだ。
改めて、一巻から読み進めていく。
「政宗は、腕をついて視線を絡める。『……もう逃がさへん』……『好きな子が無防備なん、反則やろ』……っつ!」
気づけばセリフを声に出していた芽依子は、耳まで真っ赤になっている。
「む、むりむりむりっ……!!」
そのまま、枕に突っ伏して転がる。
「久しぶりに読んだけど……やっぱり良いなぁ~」
読みはじめたら止まらなくなり、とっぷりと夜が更けていった。



