こども食堂のいとこちゃん

「おはようございます! 優友食堂、学習会を始めます」
「どうぞ〜、食堂でサポーターさんたちとお勉強しましょう。さあ、入って!」

 今日は、5月6日。
 いよいよ本日、優友食堂の勉強会ーーー学習会の実行日だ。
 朝5時半に起きて、私は練くんとチョコレートの湯煎に取り掛かった。
 おばあちゃんがチョコブラウニーを作ってくれていたから、飾りつけ用のチョコペンを慎重に鍋に入れる。
「玲奈。もう誰か来てるから、ちょっと急いで」
「うん」
 まだ使える感じはしないけれど、そろそろ取り出そうか。
 そう思って鍋に寄りかかるチョコペンにそっと触れた。
 あんまり熱くなさそうだ。
 そーっと、もう一度チョコペンを指で持ち上げようとすると、練くんがくるりと振り返り、ハッとしたような顔で叫んだ。
「危ない、玲奈!」
 あわてて持ち上げかけていたペンを離し、練くんを見る。
「危ないよ、玲奈。これを使わないと」
 練くんは、トングを手に持っていた。
「いい?」
 練くんの声が真剣な雰囲気を纏って、響く。
「うん」
 私がうなずくと、練くんはチョコペンが入った鍋に、ゆっくり、音も立てずにトングを入れる。その横顔は、なぜか、責任感を抱くようにキリッとしていて、近づきにくい雰囲気を醸し出していた。
「玲奈。ブラウニー出してくれる?」
 練くんがふいに呟いた。少しだけ淡く柔らかい声。表情もさっきまでより緩んでいる。
「うん!」
 私は練くんに、とびきりの笑顔を見せて、ブラウニーを取りに行った。
「おばあちゃん、ブラウニーどこ?」

 そして今、学習会が始まった。
 練くんも、小学生たちに勉強を教えて、楽しそうに過ごしている。
「みなさん、本日の参加賞として、食堂手作りブラウニーをお配りします! ぜひ受け取ってください。あっ、アレルギーある人は食べないでね〜」
 私は食堂の入り口に立って、みんなに声をかける。
「ブラウニーって何? ケーキ?」
「美味しそう、食べていい?」
「うん、一口サイズに切ってあるから、ゆっくり食べてね」
 昨日もいた小学生の男の子たちが、次々と手を伸ばして袋入りのブラウニーを受け取る。
「わあ、かわいい、チョコで数字書かれてる〜」
 小学1年生くらいの女の子が一人、ブラウニーを袋から出して両手にのせ、宝物みたいに見つめている。
「みなさん、ブラウニーにはチョコペンで数字や記号が書かれています。ぜひ近くの人と、計算式を組み立てて息抜きしてみてくださいね」