こども食堂のいとこちゃん

 練くんは水筒を取り出した。
「玲奈。明日も一緒に勉強会しよう」
 練くんの声に、私は思いついた。
「なら、練くん。どうせなら、ここの食堂で勉強会しない?」
 練くんの見つめる目が細められると同時に、彼はうなずいた。
「じゃあ、玲美ちゃんも呼んだら? 僕も同級生とかに声かけとくよ」
 てっきり、集中できなくならない?とか言われると思っていたけれど、練くんはやっぱり否定しなかった。
「うん。じゃあ、私は戻るね」
 立ち上がって練くんから離れる。そこで思い出した。
「練くん。伯母さんの和菓子屋、売り上げ出るといいね」
 今度こそ立ち去って、私はおばあちゃんを呼びに行った。
「おばあちゃん。練くん1人になっちゃうから、行ってあげて」
 おばあちゃんはリビングにかかったエプロンに手を伸ばしながら、
「玲奈も練くんと会えてよかったわねえ」
 と独り言のように呟いた。

 夜ごはんは、食堂で済ませることにした。まだちらほらと小学校低学年くらいの子たちが残っていて、私たちが出入りでドアを開け閉めするたびにこちらを見つめてくる。
 小学生のときは、自分と同じくらいの子に、なんだか羨ましがられているような気がしていてその視線が苦手だった。
 でも中学2年生にもなると、なんだか失礼かもしれないけれどかわいく見えてくるんだ。
「練くんも一緒に食べる? 勉強お疲れ様」
 私が、まだ1人ぽつんとテスト勉強をしている練くんに声をかけると、彼は振り返った。
「玲奈たち、今日は食堂なんだ。じゃあ、少しだけ」
「よかった〜、こっちこっち!」
 練くんを連れた先には、お米にカレールーをかけるおばあちゃんや、辣韮(らっきょう)入りの透明瓶を見つめる玲美の姿がある。
「にぎやかでいいね」
 練くんは空いている席に座って、立っている私に笑いかけた。

 カレーライスを食べながら楽しそうにおしゃべりする私たちが羨ましかったのか、それとも気になったのか。
 優友食堂の隅からの小学生たちの視線が、少しずつ近づいてきた。
「いいにおい・・・・・・カレーだあ」
 ぐんと近づいた視線に驚いていると、その子たちは言った。
「僕たちも、食べたい」
 すると、
「こっち来て」
 練くんの声が、隣ではなく、少し離れたところから聞こえてきた。
 隣にいた練くんは、いつのまにかおばあちゃんのところで、盛り付けを手伝っていた。
 小学生の男の子たちは、呼ばれるままに練くんの方へタタタッと駆けていく。私はその姿を目で追った。
 ただただ見つめていると、練くんがカレーライスをお皿に盛って差し出すのが見えた。