いじわる主治医は、私にだけ甘い

海に着くと、殆ど人は居なかった。
風も弱くて、波も穏やかで海デート日和だった。
世界が祝福してくれるみたい、なんて考えるのは甘すぎるかな?

「彩人、運転お疲れ様。良かったらこれ、お昼ご飯作ってみたの」

「ありがとう。冴、料理できるんだ」

「うん。うち5人兄弟で、私が長女でさ。親に負担かけたくなくて18で家出てずっとバイトしたりして一人暮らしなんだ」

「仕送りもしてるんだろ?」

「うん。ちょっとだけだけど」

「十分だよ、すごく頑張ってる。このお弁当もおいしいし。それに筋腫ができても痛みを我慢して働き続けて……」

手を繋いで、彩人は言ってくれた。

「もう俺の前では我慢しなくていい」

不意な優しさに、涙が出た。

「具合悪いのも、全部俺にだけは隠さないで」

「先生だから隠したくなるんです」

先生は肩に手をかけて言った。

「じゃあ、俺だけは暴いていくから」

先生の顔がだんだん近づいてきて、鈍い私にもさすがに何が起こるのか分かった。
瞳を閉じると、先生の温かな唇がゆっくりと重なる。

「冴、俺は君が好きだ」

キスし終わったあと、先生は真っ直ぐに私を見つめて言ってくれた。

「私も、彩人が好きです」

「恋人になってほしい?」

「そんなの、聞かなくてもわかるでしょ?」

「冴の口から聞かないと分かんない」

「私と……つ、付き合ってください!」

「うん。じゃあご褒美。冴、こっちおいで」

彩人は私をぎゅっと抱きしめて、熱いキスをしてくれた。

「これからよろしく」

そして耳元で”俺の冴”と囁いてくるので、耳まで真っ赤になった。