『……っ、はあ……、、』
激しかった呼吸がようやく熱を失い、
海緒の体が重力に預けられるように脱力する。
俺は彼女が滑り落ちないよう、
そっと腕に力を込めて、その小さな体躯を支え直した。
「落ち着いた?」
耳元で囁くように問いかけると、
彼女は俺の胸に顔を埋めたまま、掠れた声で答えた。
『……はい……すみません……』
海緒の小さな手が、キュッと俺のシャツの裾を掴む。その微かな力加減が、彼女が今どれほど心細いのかを物語っていた。
こんな状態になっても、まだ周りに気を遣って謝ろうとする彼女が、痛々しくてならない。
「今日は、マネージャーの仕事休んでいいから。部屋でゆっくり体を休めろ」
『いや、でも……練習が……』
「いいんだ。お前の代わりはいても、お前自身は一人しかいないんだから」
そう言って、俺は彼女の背中をポンポンと軽く叩いた。
本当は、このまま誰の目にも触れない場所へ連れ去ってしまいたい。佐原の視線も、あの日から続く彼女の不安も、全部俺が遮断してやりたい。
そんな独占欲を悟られないよう、俺は努めて「頼れる先輩」の顔を作り、彼女を部屋へと促した。



