5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。




『……っ、はあ……、、』



激しかった呼吸がようやく熱を失い、
海緒の体が重力に預けられるように脱力する。


俺は彼女が滑り落ちないよう、
そっと腕に力を込めて、その小さな体躯を支え直した。



「落ち着いた?」



耳元で囁くように問いかけると、
彼女は俺の胸に顔を埋めたまま、掠れた声で答えた。



『……はい……すみません……』



海緒の小さな手が、キュッと俺のシャツの裾を掴む。その微かな力加減が、彼女が今どれほど心細いのかを物語っていた。


こんな状態になっても、まだ周りに気を遣って謝ろうとする彼女が、痛々しくてならない。



「今日は、マネージャーの仕事休んでいいから。部屋でゆっくり体を休めろ」

『いや、でも……練習が……』

「いいんだ。お前の代わりはいても、お前自身は一人しかいないんだから」



そう言って、俺は彼女の背中をポンポンと軽く叩いた。

本当は、このまま誰の目にも触れない場所へ連れ去ってしまいたい。佐原の視線も、あの日から続く彼女の不安も、全部俺が遮断してやりたい。


そんな独占欲を悟られないよう、俺は努めて「頼れる先輩」の顔を作り、彼女を部屋へと促した。