5月の雪が止む頃に、君が本当の笑顔を取り戻せるように。




『……っ……カハッ……』



喉を鳴らすような、苦しげな音が海緒の唇から漏れる。
どうする。どうすれば、この子を救える?


恐怖と焦りで真っ白になりかける頭を、
無理やり、冷徹なまでの「正常ルート」へと引き戻す。


(……そうだ、海緒は「俺を裏切った」と思い込んで、自分を罰しているんだ)


過去のトラウマに、現在の罪悪感が重なり、
彼女を暗い底へと引きずり込んでいる。


それなら、今の俺にできることは、ただ一つだけだ。



「……海緒、俺を見ろ」



俺は彼女の小さな頬を、壊さないように、
けれど逃がさないように両手で包み込んだ。

焦点の合わない、不安げに泳ぐ瞳を、
俺の視線で力強く捕まえる。



「……このくらいじゃ、俺はお前を嫌いになったりしない。好きなことも、何一つ変わりない。だから……落ち着こう。な?」



一文字ずつ、彼女の鼓動に直接打ち込むように言い聞かせる。


俺の体温が、彼女の冷え切った頬に伝わっていく。

「大丈夫だ」という言葉をただ繰り返すのではなく、俺の「変わらない想い」を証明することで、彼女を縛る呪いを解きたかった。


海緒の震える瞳が、少しずつ、俺の瞳の奥を映し出し始めた。