一瞬だけ迷って、それでも言った。
「じゃあ私が出ていきます」
「行くあてあんの?」
「…それは、どこか友達のところとか、なんとかします」
「まあ、別に止めないけど」
どうでもよさそうな口ぶりを見ると、彼は本当になにも考えていなそうだった。
私だけがひとり動揺しているみたいで、滑稽にも思える。
誰が普通で、誰が普通じゃないのか、分からなくなってくる。
でも、私は絶対に間違っていないはず!
「友達に連絡して当たってみますから────」
そう言いながらスマホを取り出すと、
ピンポーーーン、という無機質な電子音が鳴り響いた。
「ひぃっ!」
思ったより大きな声が出て、慌てて口を押さえた。
私の騒ぎっぷりにまったく構うことなく、彼は部屋で光っているモニターをつけた。
「はい」
『あっ、お世話様ですー!穂村さんのご自宅で合ってますかー?』
「えーっと…」
一瞬、彼がちらりと視線を私に向けてくる。
はっと我に返ってコクコクと首を縦に振った。
まだ名乗ってもいないから、私の名前なんて知るわけがないか。
「あー、なんか合ってるみたいです」
『引越しセンターの者です!家具家電一式、お持ちしましたー!鍵、開けてもらえますー?』
もう一度、今度はハッキリと彼が私の方を振り向いた。
「どうする?出ていくんだっけ?家具家電一式の荷物は?友達んとこに転送?」
ゴトッと音を立ててスーツケースを倒してしまった。ついでにスマホも落下。
今日の私は感情のジェットコースター。
飲み込まれて立ち上がれそうにない。
あの大量の荷物を友達の部屋で預かってもらうなんて、到底無理な話。
そうなると、もう選択肢はひとつしかない。
「……とりあえず、部屋に運んでもらってください」
それしか、言えなかった。
••┈┈┈┈••
「じゃあ私が出ていきます」
「行くあてあんの?」
「…それは、どこか友達のところとか、なんとかします」
「まあ、別に止めないけど」
どうでもよさそうな口ぶりを見ると、彼は本当になにも考えていなそうだった。
私だけがひとり動揺しているみたいで、滑稽にも思える。
誰が普通で、誰が普通じゃないのか、分からなくなってくる。
でも、私は絶対に間違っていないはず!
「友達に連絡して当たってみますから────」
そう言いながらスマホを取り出すと、
ピンポーーーン、という無機質な電子音が鳴り響いた。
「ひぃっ!」
思ったより大きな声が出て、慌てて口を押さえた。
私の騒ぎっぷりにまったく構うことなく、彼は部屋で光っているモニターをつけた。
「はい」
『あっ、お世話様ですー!穂村さんのご自宅で合ってますかー?』
「えーっと…」
一瞬、彼がちらりと視線を私に向けてくる。
はっと我に返ってコクコクと首を縦に振った。
まだ名乗ってもいないから、私の名前なんて知るわけがないか。
「あー、なんか合ってるみたいです」
『引越しセンターの者です!家具家電一式、お持ちしましたー!鍵、開けてもらえますー?』
もう一度、今度はハッキリと彼が私の方を振り向いた。
「どうする?出ていくんだっけ?家具家電一式の荷物は?友達んとこに転送?」
ゴトッと音を立ててスーツケースを倒してしまった。ついでにスマホも落下。
今日の私は感情のジェットコースター。
飲み込まれて立ち上がれそうにない。
あの大量の荷物を友達の部屋で預かってもらうなんて、到底無理な話。
そうなると、もう選択肢はひとつしかない。
「……とりあえず、部屋に運んでもらってください」
それしか、言えなかった。
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